「知る権利」とは
私は、最近、ずっと「知る権利」のことを考えていた。そもそも知る権利とは何なのだろうか。デジタル大辞泉の解説によれば、「国民が国の政治や行政についての情報を知ることのできる権利。民主主義国家での国民の基本的権利として、言論・報道の自由や情報公開法制化の基盤となるもの。」とある。
メディアの役割と現実
そして、国民の知る権利を担保する上で大きな役割を果たしているのはメディアなのだろう。「だろう」と書いたのは、現実には、疑問があるからだ。とりわけ、安倍政権になってからその疑問が大きくなり、メディアが国民の知る権利ではなく、政権維持の片棒を担ぐことで自分たちの既得権益を守ろうとしている裏の姿があることに気づいた。
積極的に政権を擁護するメディアと政権に都合の悪い情報を見て見ぬ振りをするメディア、そして積極的に政権に対する批判的な姿勢を貫こうと努力しているメディアがあるように思う。しかし、いずれのメディアも国から既得権益で保護されている立場にあるという側面がある。政府との間に利害関係を持っており、国民の知る権利を担保する役割は、とても脆弱だと思う。
👉なぜ都庁記者クラブの記者たちは「舛添都知事」の悪事に気づかなかったのか~舛添問題をはじめとして、政治や行政のスキャンダル第一報が新聞から出にくくなっているのは、記者クラブを接点とした馴れ合いが、権力の不正を監視して暴くための「軋轢を覚悟した積極的な取材」を内側から蝕み、阻んでいるからである。
👉沖縄の米軍女性殺害事件で本土マスコミが安倍官邸に異常な忖度! 読売は「米軍属」の事実を一切報道せず~しかし、驚いたことに、それでも頑として米軍関係者の存在に一切触れなかった新聞社がある。読売新聞と日経新聞(全国版)だ。
👉(社説)「1億総活躍」社会 消費増税の支えが必要だ~過去最高を更新してきた企業収益に陰りが見え、熊本地震も起きたが、長期的な視点に立って消費増税は予定通り実施するべきだ。
→言論への圧力を跳ね返すためにはメディアは自らを律しなくてはならない
→嵐・櫻井翔の父親、総務省事務次官抜擢の裏に安倍政権の思惑が! テレビ局支配を強化
→6万人! 国会前デモの熱気を伝えないNHK、日テレ、フジはどこの国の報道機関なのか
→安倍政権にNOの声が続々!宮崎駿、鶴瓶、美輪明宏、アジカン後藤、制服向上委員会…
既存メディアの衰退とライフスタイルの変化
そして、NHK以外は、民間の営利企業だということだ。従来型の新聞やテレビは、ネットの普及で需要と収入が減少し続けている。雑誌や書籍の販売もネットへのシフトで減少が続いている。この流れは、止めることができないと思う。少子高齢化を政策的に止めることが困難であるように。
👉「新聞崩壊」が深刻化。またまた100万部減少していました ついに「次の時代」が始まるのか?
→「出版社の倒産」激増 若者「読まず」高齢者「読めず」で八方塞がり
→出版倒産、前年度比5割超の大幅増~ 消費税の増税で販売部数落ち込む ~
→壊滅寸前の出版業界、救いようのない惨状 交通費削減で徒歩強要、給料不明、モラルゼロ…
→栗田出版販売が民事再生法を申請 負債135億円、取次では過去最大の倒産
→出版業界の総売上高、5年間で1兆2500億円消失--"書店経営業者"数が大幅減少
→2015年最悪の仕事に「新聞記者」が選出される 際立つ「成長見通し」の低さ
紙媒体やテレビに対する需要が減っているのは、国民のライフスタイルそのものが変化しているからでもある。それは、若者が、車に魅力を感じなくなっていることと同じ現象のように思う。
→若者のテレビ離れ 番組の質と選択が無関係な時代 藤本貴之氏
→「情報の接触経路」の破壊的変化が起きている 即応が求められる新時代のデジタル戦略~インターネット経由でニュースに接する傾向の伸びは、先進諸国全体の趨勢であることが明瞭だ。
若者の所得自体が減っており、あらゆるサービスがネットで入手した方が安価で便利な時代に紙の新聞や雑誌を積極的に購入する動機がなくなってきているように思う。テレビを見なくてもスマホがあればいいという若者が増えている。そもそもテレビを持っていない若者がいる時代だ。働いている人たちは、休みの日以外、新聞にじっくり目を通す時間すらないように思う。
→若い世代の新聞離れが進む中、 年収1,000万円以上の92%は新聞を購読
疲れている勤め人が、休みの日に普段、目を通していない新聞をまとめて読むような時代でもないように思う。まして数日前の鮮度の落ちた情報にじっくり目を通す気が起こらないと思う。おそらく、定年退職した人や仕事で新聞の情報が必要な人以外、新聞を丹念に読むような習慣がなくなりつつあるように思う。
新聞の紙面は、一覧性は高いが、数日分でもその中から特定の情報を探そうとするととても手間が掛かる。まして、うろ覚えの情報を探そうとするとその困難性は、根気との勝負になってしまう。鮮度と検索という面ではアナログ情報は、デジタル情報に勝ち目はない。それでも紙の情報は、安定しており、携帯性がよく、いつでもどこでも確認できる優しいツールだ。紙の文化は、縮小することはあっても、今後とも残り続けることは間違いないと思う。
新聞は民主主義のインフラ?
ジャーナリストの池上彰さんは、日経ビジネス・オンライン(2015年5月11日付)の「紙の新聞はやっぱりなくなる? 民主主義のインフラは誰が担うのか」という記事の中で「民主主義社会のインフラ。それが新聞です。」と語っている。
一方で「新聞各社が悩んでいること、それは、紙の新聞がどんどんどんどんと減る中で、新たな利益を得られる構造をどうつくるかです。紙から電子版に移っていけばいいのですが、有料で電子版を提供しても、現状では、なかなかお金が得られません。」と新聞の現状を伝えている。現在、「新聞の電子化に関して、日本で、唯一成功しているのは日本経済新聞」だけだそうだ。
ネットの新聞の「タダ見」で十分?と池上氏は、問い掛けている。「できれば、まず1紙取ってみる、あるいは、何か起きたときにはもう1紙買って読み比べてみてはいかがでしょうか。」と複数の新聞の購読の必要性を説いている。この意見には、私も賛成だが、現実はかなり厳しいように思う。
現在、若者は、スマホの利用代金を月に8,000円程度負担しており、おそらく有料の音楽のネット配信は利用している人も多いだろう。しかし、購読料が4,000円もする新聞を自分で購入している若者は少ないように思う。有料の日経の電子版を読んでいるのはビジネスパーソンだろう。正直、仕事で必要だから購読しているのだろう。
だから、そもそも新聞自体購読してない人が、何か起きたときにもう1紙買って読み比べるという選択は現実的ではないように思う。テレビを持っていない若者の中には、必要性がないという理由だけでなく、できるだけ生活費を節約したいためにNHKの受信料が強制的に徴収されるテレビを買わない選択をしている人も多いのではないだろうか。
NHKの受信料と知る権利
仕事上の理由で2紙以上の新聞を購読している人はいるかもしれないが、一般の人で2紙以上購読している人はあまりいないのではないかと思う。だから本来なら公共放送であるNHKが国民の知る権利を担保する役割を果たさねばならないはずだと思う。税金ではない受信料の支払い義務が国民に課されているのは、国民の知る権利を担保するためではないのだろうか。
すべての国民に正しい情報を伝えるのがNHKに課された義務のように思う。ここで言う正しい情報とは、安倍政権が要求するお互いの言い分を均等に伝えるような定量的「公平中立」の情報ではない。政府に関する情報については、憲法の立憲主義に基づいた報道がなされればならないはずだ。なぜなら政権は憲法上、憲法順守義務を負っているからだ。すなわち、「国家権力を制限し人権を保障する法」である憲法に基づき権力の乱用を防止するための報道をするのがNHKの役割であって政権に対して"公平中立"な報道をする義務は、最初から存在しないはずだ。
しかし、現状では、NHKの経営を監視する経営委員は国会の同意を得る必要があるものの首相が任命しており、その独立性が不十分だ。実際に安倍首相は、恣意的な経営委員の任命を行っていると思う。今、話題の言論封殺を公言する百田氏を(元)NHK経営委員に任命したのは安倍首相だ。しかも、首相と百田氏は右滑稽?(うこっけい)の言論封殺コンビだ。
→【安保法案】NHKが"国会中継"せず 乙武洋匡さん「公共放送と言える?」
→安保法案、衆院本会議で可決 NHKは予定を変更して国会中継
→「NHKよ、なぜ安倍首相への帰れコールを隠すんだ」 海外メディアの記者が疑問視【沖縄・慰霊の日】
→NHK、驚愕の「安倍政権ベッタリ」偏向報道が発覚!ついに国民が抗議の包囲網!
既存のメディアの知る権利の担保能力の衰退
民主主義の根幹である国民の知る権利はあっても、民主主義を守るために知る義務を国民に強制することはできない。既存のメディアの知る権利の担保能力の衰退をどういう方法でカバーしていくかを検討することが大切だと思う。
私は、若い頃、新聞は取っていたが、正直、自分の関心のある分野か仕事に関連した記事以外あまり熱心に読んでいなかったように思う。政治に関する記事を読むことはほとんどなかった。会社でも仕事の一環として購読紙以外の経済紙に複数目を通す程度だった。同僚は、帰りによくスポーツ新聞を購入していたが、読み比べのために一般紙を買っている姿を目撃したことはない。
メディアも大変なんですよ?
私は、最近まで、新聞が利害関係に配慮して記事を書いているなどと考えたことはあまりなかった。ただ、自分が仕事で関連している記事を読んだときに記者が入手した情報をあまり理解しないまま記事にしていると感じることはときどきあった。それは、故意ではなく、情報の書き手の能力の問題にすぎない。だが、よもや故意に世論操作をしている記事があるなどとは思っていなかった。新聞記者は、真実を報道するために一定の職業倫理観を持ったプロ集団だと思っていた。
しかし、最近、現実は新聞記者も普通の営利企業の一サラリーマンにすぎないのだと思い知らされている。ジャーナリストも高い職業意識を持っている人は限られているようだ。自分の会社が生き残るため、あるいは自分の生活のためなら仕方がないという保身集団の一員のようだ。日頃は、既得権益の打破とか、効率的な経営が企業には求められているとかいう社説をよく目にするが、自分たちの業界の不都合な真実には目を反らしているサラリーマン社会の一員にすぎないようだ。
例えば、新聞業界は、知る権利を理由に新聞に軽減税率を適用するよう新聞協会を通じて政権に要望しているが、こうした要望への配慮からか、作為もしくは不作為により知る権利を遮断するような行為が新聞でも現実に起きているように思う。国民にとって重要な事項を敢えて報道しない行為が起きている。最近、報道の自主的な報道規制もしくはメディアの委縮という言葉を度々、目にするが、その本質は自社の利益と不利益だけを天秤にかけた保身行動にあるようで同情に値しない。情けないメディアと安倍首相に叩かれても「いやぁ、メディアも大変なんですよ」と国民に言い訳するつもりなのだろうか。
→<消費税>新聞に「軽減税率」を適用すべきか? 税理士の多くが「不要」と回答
「正義の味方」と書いて「政権の味方」と読む、偏向報道へいちゃら?
もう、周知の事実なので、はっきり言うが、読売新聞と産経新聞は、政権と癒着した偏向報道が多いと思う。政権の暴走を抑えるためという国民の知る権利を踏みにじり、政権の暴走に加担する営利企業だと私は思っている。産経新聞は、毎日のように嫌韓記事を載せており、読売新聞は、世論を誘導するような世論調査を公表している。
また、読売新聞は、社説で安保法制の成立を支持する記事を載せている。読売も含めたすべての世論調査で国民の80%以上が説明不十分と感じていると回答し、国民の過半数が反対している安保法制について与党ではなく、野党を牽制し、法案成立を擁護する社説を読売新聞は掲載している。世論調査を読売新聞は何のために実施しているのだろうか。読売新聞や産経新聞に政権を監視するための国民の知る権利を語る資格はないと思う。
→集団的自衛権の行使容認~8政党&5新聞のポジション比較・主な主張
◇安保法案参院へ 日本の平和確保に重要な前進 (2015年07月17日 読売新聞社説)~◆与野党は本質的な議論を深めよ◆立憲主義にも合致する…(民主党の岡田代表の発言について)いずれも的外れな主張だ。◆日米同盟を強化したい
→全国紙、とくに産経がほとんど売れないのは沖縄だけではありません
最近まで知らなかったが、読売新聞も20年前に「憲法改正試案」なるものを発表している。産経新聞の「国民の憲法」要綱ほど露骨ではないが、自民党の憲法改正草案と共通する思想が流れているように思う。
自民党や橋下市長が目の敵にしている朝日新聞や毎日新聞、そして東京新聞は、報道が偏向しているわけではなく、護憲、反原発、社会的弱者保護の視点から記事を書いているように思う。いずれも「国家権力を制限し人権を保障する法」という憲法の立憲主義に反しない報道をしているように思う。ただ、新聞社の不都合な真実には、いずれも見ざる、聞かざる、言わざるという弱い立場にあり、最後まで立憲主義を貫けるだけの覚悟があるのかが問われているように思う。
→【特報】『知られざる新聞社のビジネスモデル』、日本の新聞社が権力批判を恐がる本当の理由は? 安倍首相も昔から「押し紙」問題を把握ずみ
→毎日新聞「押し紙」の決定的証拠 大阪の販売店主が調停申し立て 損害6,300万円返還求め
→朝日に読売…消費増税に賛成し、自らは平然と軽減税率を求める大手新聞社の醜態
◇安保法案、衆院通過 民主主義の岐路に立って(2015年7月17日 東京新聞社説)~◆反対の大きなうねり…石破茂地方創生担当相はかつて自民党幹事長時代、国会周辺で繰り広げられた、特定秘密保護法や原発再稼働に反対するデモ活動を「テロ行為」と同一視して、批判したことがある。その石破氏ですら、全国で反対デモが続く安保法案について「国民の理解は、まだ進んでいるとは言えない」と認めざるを得ないほど、この法案は異常さが際立つ。◆「白紙委任」ではない◆声を出し続ける覚悟
世論調査とは何なのだろうか
世論調査とは何なのだろうかという疑問が湧き、NHKの岩本裕氏が書いた「世論調査とは何だろうか」という新書を購入して読んでみた。私は、世論調査をこれまで新聞社それぞれが実施している独自のアンケート調査だと思っていた。だから、精度のあまり高くない情報だろうと勝手に思っていた。
しかし、世論調査の歴史は古く、戦後、「民主主義の国アメリカで育った科学的な世論調査を日本に根付かせるため」に始まったことをこの本で知った。世論調査も1981年に常用漢字が定められるまで「“輿論”(よろん)調査」と表記していたそうだ。輿論と世論では、それまで 異なる意味で使われていたという。輿論はパブリック・オピニオンというニュアンスで使われ、世論はポピュラー・センチメンツという軽いニュアンスで使われていたそうだ。
世論調査は「全体を代表するように人を選び、少数の結果から全体の結果を推測する」という統計理論を使って実施されているという。そして「全体の代表を選び出すために最も良いとされている方法が、ランダムサンプリング=無作為抽出」で誤差の精度が95%になるようにサンプル数を決めて調査が実施されているそうだ。
こうした考えをベースにして実施されている世論調査の主流は、RDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)という電話による世論調査だ。そして、世論調査の精度は、選挙での「答え合わせ」を通じて検証されているという。
設問の作り方で世論を誘導することが可能なことを新聞社自身認めている!
しかし、こうした統計理論を駆使した世論調査も質問の言い回しと順番で回答が変わってくることが分かっているそうだ。そして設問の作り方で世論を誘導することが可能なことを新聞社自身認めている。例えば、回答の選択肢を肯定系2つと否定1つとした場合、肯定系が多くなり、質問文の表現でも回答を誘導することができるという事例が本書に載っており、記事を掲載した読売新聞自身がその点を記事の中で認めている。それは、2014年6月2日の集団的自衛権をめぐる憲法解釈の見直しに関する「公明説得へ好材料」という記事のことだ。
「この記事では、賛否の2択で聞いた朝日新聞と毎日新聞の世論調査では反対が多数を占めたことを記した上で、『読売と産経の調査では、3択で聞いたため、「必要最小限」という中間的な選択肢に回答が集まったとみることもできる』と中間的選択肢による影響があった可能性を認めています。しかし、日本人を乗せたアメリカ軍の艦船を守ることや国際的な機雷の掃海活動を認めることに賛成する人が7割を越えたことを挙げ、『具体的な事例について聞けば集団的自衛権の行使を容認する人が多い』と結論づけています。」(「世論調査とは何だろうか」からの抜粋)
しかし、この世論調査の時点で集団的自衛権についてきちんと理解している国民がどれだけいただろうか。現在、安保法制に対する安倍政権の説明を聞いても80%以上の国民が十分な説明をしていないと感じていることを考えれば、具体的な事例については、単に人道的、国際的貢献という一般的な判断から賛成しているにすぎないように思う。正直、私でも集団的自衛権の行使という問題を抜きにすれば、事例に賛成するだろう。世論を誘導したというだけでなく、結論ありきの分析をして政権に協力したと言われても仕方ないと思う。
中間的選択肢についてのコメントは、世論調査の内容に対する批判を予想したものだろう。一応、そうした問題点があることも認識した上での見解であることをアピールするための防衛的措置にすぎないように思う。どう捉えるかは読者の判断でお願いしますという保身から出ているように思う。
「そして、6月13日付の記事では『首相に勢い 公明軟化「世論6割支持」考慮』と報道した。この中では、読売新聞の行った世論調査で限定的な容認への支持が6割に上ったことなどから、安倍総理大臣が自信を深めて閣議決定を求める姿勢を強めた。このため、憲法解釈の見直し自体を当面先送りしたかった公明党も『決断を先送りするのは困難だと判断』したとしています。」(「世論調査とは何だろうか」からの抜粋)
しかし、これはおかしな記事だ。何故なら、朝日と毎日の世論調査では反対多数とされたのに、何故、公明党は、朝日と毎日の世論調査の結果を無視して読売の世論調査の結果を理由に「決断を先送りするのは困難だと判断」したのだろうか。しかも、読売は、わざわざ中間的選択肢の影響についてコメントしているわけだから。公明党が本当に先送りしたかったのなら、こうした点を理由に先送りを主張することは十分可能だったはずだ。
政権は自分たちに都合のいい内容の世論調査を利用している
要は、公明党は、世論によりやむなく「決断を先送りするのは困難だと判断」したことを強調したかったのだろう。おそらく集団的自衛権の行使に反対の支持者に対するエクスキューズのために読売新聞の世論調査を利用しただけのように思う。政権の片棒を担ぐ読売新聞の報道姿勢が如実に表れているように思う。消費税の軽減税率は公明党が推進する主要政策だ。新聞への軽減税率の適用を求める新聞協会会長会社は読売新聞であり、新聞への軽減税率の適用は読売新聞の独裁者渡邉会長の強い意向だそうだから推して知るべしということだろう。
「産経新聞は、その1週間後に、閣議決定前後の世論調査を比較する記事を載せ、『朝日・毎日 質問に「枕詞」、回答に影響?』と見出しをつけました。その中で、世論調査の結果が割れた原因は『必要最小限』という選択肢を用意したかどうかだったことを認めたうえで、『朝日と毎日新聞の質問には、「これまで政府は憲法上、集団的自衛権を使うことはできないと解釈してきたが」という枕言葉が登場。解釈変更はタブーとの印象を与えかねない』としています。そして『中立にみえる世論調査も、各社の意図で結果が左右される場合があるのだ』と主張しています。」(「世論調査とは何だろうか」からの抜粋)
「必要最小限」ということばは、上智大学新聞学科の渡辺久哲教授が世論調査で避けたい5つの言い回しの一つであることを指摘している。
「読売新聞や産経新聞が『必要最小限度』という質問を使い始めたのは、ちょうど政府と自民党で『限定容認論』が勢いを得てきた時期でした。自民党の高村正彦副総裁が、公明党の理解を得るために考えた理論です。」(「世論調査とは何だろうか」からの抜粋)
→なぜ読売新聞の世論調査では「安保法制賛成」が40%もいるのか? 回答誘導のカラクリ
→池上彰も唖然、読売新聞が世論調査で安保法制賛成を誘導する露骨な質問! でも結果は…
調査方法にも課題
世論調査には、調査方法にも課題があるそうだ。その一つは、現在、主流のRDD調査が固定電話を持っている人が対象だということだ。とりわけ、固定電話を持たない若者が増えており、「全体を代表するように人を選ぶ」という正しい対象者の選択が行われていない可能性が指摘されている。また、回答率の低下という問題もあるようだ。
現在、携帯電話を対象にしたRDD調査の実験や研究が行われているそうだが、携帯電話独自の番号体系、回答者のゆがみ(女性の回答が少ない)等の問題から「携帯電話単独でRDD調査を行うのは非常に難しいことが実証」されているという。そこで、「固定電話の調査と組み合せることで、互いの弱点を補い合えば、より正確な世論調査ができる可能性のあることも確実にわかった」そうだ。
世論調査は私たち国民が、選挙以外で政権に民意を伝える手段
世論調査には、こうした欠点もある一方で、私たち国民が、選挙以外で政権に民意を伝える手段(著者は「武器」と表現している)になることを本書は訴えているように思う。とりわけ、内閣支持率は、政権の政策のリトマス紙と言えるもののようだ。私たちは、誤った政府の政策にノーと言うためには、新聞社の世論調査に努めて協力することが大切なのかもしれない。支持率の低下は、誤った政策を止めるだけでなく、政権を倒す力すらあるからだ。
→各新聞社の世論調査の結果は,各社の編集方針(意思)の反映である。
知る権利を守るためにメディアに望むこと~私の提案
国民の知る権利を守るためには、いろいろな問題が山積しているかもしれないが、メディアが今後も重要な役割を担わなければならないことは間違いないように思う。しかし、各種の規制や保護策でメディアを守るのではなく、メディア自身が、旧態依然とした販売体勢を抜本的に改革して自立することが求められているように思う。既得権益にあぐらをかき続けるなら既存のメディアはいずれ衰退していくことは明らかなように思う。また、国の保護政策で延命するなら、絶滅危惧種として生き残るしかないように思う。
今後、ますますメディアの中心がネットに移行するのは、避けることができないように思う。しかし、現在、各社が進めている個別的なネット対応(新聞や雑誌等の電子化)は、率直に言って成功しないように思う。いくらメディアが知る権利を守るために必要だとしてもそれだけで国民が既存メディアを積極的に利用し続けることにはならないだろう。
また、新聞社が知る権利を理由に軽減税率の適用を求めても、知る権利を守るために新聞がちゃんと機能していない現実があり、虫が良すぎるという思いを多くの国民は抱いているはずだ。だから、知る権利などという理由ではなく、「紙の文化」を残すために雑誌、書籍を含めた紙のメディア全体に軽減税率の適用を求める方が、国民の理解が得られやすいように思う。新聞だけでなく、漫画や女性誌も紙の文化として保護される価値があるように思う。しかし、それでも紙の文化は減少していくことは避けられないだろう。紙の文化が残ることは、情報の多様性を守り、多様な情報源があることが結果的に脆弱な知る権利を支えることになるように思う。
共同の配信サイトの立ち上げ
だから、どうだろうか。農業が生産から加工・販売まで手掛けることで生き残ろうとする動きがあり、メディアもこうした自分たちで作り、自ら販売することに創意・工夫をしたらどうだろうか。例えば、新聞や経済誌が、ヤフー等のサイトに記事を配信しているが、それはそれで一つのネット対策だろう。それとは別に、共同の配信サイトを立ち上げて直接稼いだらどうだろうか。
共同配信することで、ユーザーは読み比べが可能になり、偏ったメディアの記事だけ読まされるリスクが減少するように思う。正直、現状では、価格、情報の信頼性から言ってひとつの新聞の電子版を購読する気にはとてもなれない。また、紙と同一のイメージの配信は、画面の大きくないスマホには向いていないように思う。画面をスクロールして読むのはストレスもたまる。
私の考える共同配信サイトの具体的なイメージは、大手新聞、地方新聞、経済誌で共同「読み比べサイト」を立ち上げるという構想だ。料金は、月額1,000円程度でユーザーは、自分の好きなメディアを5つ選択する。契約は月額制の自動更新とし、ユーザーは月単位で購読メディアを変更できるものとする。「政治」、「経済」、「社会」と「各メディアの得意分野」の4テーマについて主要記事(特に知る権利に欠かせないと各社が考える記事)をユーザーに配信する。
共同サイトから上がる購読料収入と広告料収入は、月単位の各社別ユーザー件数で配分する。従って、いい記事を書いてユーザーから購読対象に選ばれなければ、収入が得られないことになる。またいい記事を書き続けなければ、すぐにユーザーから選択を解除されることになる。地方新聞は、サイトに記事を配信することで、これまで読んでもらえなかった地域の読者を獲得でき、収入も得られることになる。故郷の新聞を読みたいというユーザーはたくさんいるように思う。
地方紙との併読効果で大手紙も単独のサイトだけでは取り込めない多様なユーザーを取り込むことができる可能性がある。また、単独では、読んでもらえない他紙のユーザーの取り込みも期待できるのではないだろうか。場合によると自社のことを嫌っている他社のユーザーが読み比べのために自社の記事を読んでくれるかもしれない。嫌われていたユーザーからも収入が得られるならこんないいことはないのではないだろうか。いい記事を書いた記者には、報奨金を支払うシステムにすれば、記者がいい記事を書きたいというインセンティブになるのではないだろうか。
以上思いつきだがどうだろうか。要は、既得権益にしがみついたり、国に保護を求めるのではなく、従来のシステムから自ら脱皮するための創意工夫がメディアには求められていると思う。
おしまい
(追記)
共同の読み比べサイトではないが、朝日が「シンプルコース月額(980円)」の提供を始めた。横並びでない、一般企業並みの経営努力をやっと始めたようだ。有料記事が月に300本読めるコースのようだ。しかし、本当に必要なのは既得権益から足を洗って新しい競争的なサービスの中で独自性で勝負できなければ、新聞はメディアとして生き残れないと思うのだが…。
(追記2)知らなかったが、共同の読み比べサイトの試みは過去に既に存在していた!
(追記2)維新の党の「どん引き」発言にどん引き!
安全保障関連法案は15日午後、衆院特別委員会で採決が行われ、自民・公明両党による与党単独強行採決が行われた。維新の党が退席し、民主・共産両党が抗議したことに対して維新の浦野靖人議員が「本当に個人的にはどん引き、ちょっとできませんね、僕たちは」と発言した。自民党に擦り寄り、橋下氏にすがる情けない維新の党のこの発言にどん引きした国民は多いと思う。維新の安保法制対案が自分たちの保身のための行動にすぎないのに、独自性を主張する勘違いにどん引きしてしまった。
責任野党って何だろう?政権の横暴を抑制するのが責任野党なのではないだろうか。政権の考え方に同期したら、協調するのが責任野党だろうか。国民のために政権を監視し、政権の専横を抑制する役目を国民は野党に期待しているはずだ。維新の「是々非々」や「責任野党」の中身は、公明党の立ち位置と変わらないように思う。だから、与党の座を守りたい公明党が従来の路線を逸脱し、公明党が安倍政権の単なる追認政党化した原因は、結局、維新の党にある。だから維新の党は、安倍政権にとっては、とても都合のいい責任野党だろう。
→安保法案「成立すれば国民は忘れる」 強行採決の背景は~首相に近い参院議員の一人は「消費税や年金と違い、国民生活にすぐに直接の影響がない。法案が成立すれば国民は忘れる」と言い切る。
この間の派遣法改正法案の強行採決でも維新の足立康史議員が「日程闘争のための日程闘争だ。55年体制の亡霊がこの部屋にいる」と、審議拒否する民主党を批判していた。
民主党も早く、維新の党に三行半の返礼をする時期に来ているように思う。数合わせのために維新や小沢系議員との連携に拘泥していては、民主党はいつまでも国民の信頼を勝ち取れないだろう。民主党は玉木雄一郎議員をトップとする「特命人事部」で新しい候補をどんどん公募するべきだ。
維新の浦野議員も足立議員も「橋下大阪系」で、前回の衆議院選で二人とも比例復活で当選している。維新から彼ら橋下大阪系が独立して新党を結成しても国民の支持を得られるとは思えない。足立議員は、過去に公職選挙法違反(買収約束容疑)で運動員が逮捕されており、最近は、元事務員に対する残業代未払いとパワハラで訴えられ、和解に追い込まれている。ブラック企業体質の政党は、いずれ次世代の党同様に国民から見放されることになるだろう。
◇一転出席、ぶれた民主…党内異論・「共闘」優先(読売 2015年7月16日)~民主党内には、維新の馬場伸幸国会対策委員長ら大阪系議員への不信感が根強い。16日の衆院本会議への対応を党首会談で決めた背景には、「維新の国対は信用できないため、党首同士で調整せざるを得なかった」(民主党幹部)との見方がある。大阪系議員は15日、菅官房長官から「頑張ったと聞いている」とねぎらいの電話を受けたという。
(追記2)くたばれ〇〇党とは?
〇〇党は、4党あります。さて、どの党だと思いますか?
今、安全保障関連法案の採決をするための衆院本会議の状況がNHKで生中継されている(2015年7月16日午後2時6分衆議院通過)。安倍首相の顔が、冷酷なは虫類のように見える。小泉進次郎も普通の自民党員の一員にすぎなかったようだ。同調圧に負けたのか、それとも、もともと極右思想の持ち主だったのだろうか。何も言わないので分からない。正直、かなり気持ちが冷めてしまった。
→安保法案の強行採決は、「憲法クーデター」だ~審議時間はあと数倍~10倍は必要だった
→【安保法制】強行採決に全国各地で抗議集会 国会前はのべ10万人(画像集)
→安保法案で茂木健一郎さん、自民党議員を批判「単なるイエス投票マシン」
◇平和、変えさせない 安保法案ドキュメント(2015年7月17日 東京新聞)~国会の廊下で辻元清美議員(民主)が「国会内と国民の声がこれほどかけ離れているのを見たことがない」。小泉進次郎議員(自民)は「学者の役割を軽視する意見が出るなど(自民は)反省点だらけ」と神妙な表情を見せた。…(新国立競技場の問題で)「見直しで支持率を上げようとしているなら国民は見抜く」
(追記3)官邸のスポークスパーソン?
NHKで解説スタジアム「どう考える ”戦後70年談話」(2015年7月20日午前11~)を見ていて気になったことがあった。それは、解説委員の一人である岩田明子氏のコメントだ。内容が安倍総理の主張をなぞるような解説に終始しており、まるで官邸のスポークスパーソンのようだ。他の解説委員のコメントは、ごくごくまともな内容なので余計に岩田氏の発言内容に強い違和感を覚えた。しかも、原稿を読んでいるような感じだ。これも官邸が求める「中立公正」な報道に対応するための番組作りなのだろうか。
→籾井NHKが「大盤振る舞い」会長以下、露骨な「官邸シフト」。こっそり一律加算金をバラまいて、職員の歓心を買う。~岩田明子解説委員…知る人ぞ知る「安倍晋三首相にもっとも近い」政治部記者である。
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