ブレない経営理念
昨夜、「カンブリア宮殿」で紹介されていた刃物メーカーの貝印の経営戦略、というより社長のブレない経営理念に感銘した。素直に羨ましい企業だと思った。経営者が真摯な人だと語る言葉が素直に耳から入ってくる。
「気配りしながら変化の気配を感じる」という社長の言葉に哲学さえ感じた。気配りから「り」を取ると「気配」になるという説明を聞いてなるほどなと思ってしまった。この人は、普段から経営について絶えず自問自答して模索しているのだろう。
私が、もし若ければこんな会社で働いてみたいと思う。きっと働くのが楽しい職場だと思う。社員を大切にし、他企業には真似のできない独自技術を開発しながら社内にその技術を蓄積しており、使っている製造機械は、社内でしか作れない、外部に委託してもできないと語る社員の姿をとてもたくましく感じた。
誇りと仲間への信頼が伝わってきた。チーム貝印を感じた。人は、自分が、周囲から必要とされていると感じているときに最も幸福を感じるのではないだろうか。
貝印の社員が自分の仕事に誇りを持って働いてるのだと感じた。自分の仕事に誇りが持てるということは、本当にしあわせだと思う。残念ながら多くのサラリーマンは、生活のために仕事をしているのが現実だろう。仕事が楽しくなくても、大半のサラリーマンは生きるために一生懸命にならざるを得ないのが仕事だと思っていることだろう。
貝印も100円ショップの台頭で過去に主力のカミソリや包丁がコモディティ化し、さらにアメリカの販売子会社の債務超過という危機を味わったという。しかし、伝統の刃物づくりから「旬」という独自の高級包丁を開発し、危機から脱出して現在、新たな成長軌道に乗っていることが報道されていた。
コモディティ化に対する明確なビジョン
私は、貝印の成功は、社長がコモディティ化に対する明確なビジョンを持っていたからこそ実現できたのだと思う。もし、米国に新たに工場を建設するというリスクを取らず、単に経営危機の販売子会社の事業を清算していたら今の発展はなかったように思う。
そして、コスト削減のために人件費の安いアジアに進出していたら、負のスパイラルに陥っていたかもしれない。米国での再建ができたのは、偶然ではないと思う。それは、100年以上に亘って蓄積してきた刃物づくりの技術があったからだと思う。
もし、こうした技術を生かさず、コストを追求した汎用製品(コモディティ)で世界市場に出て行っていたら、未来はなかったと思う。その過程で人員整理→生産拠点のアジアへの移転という形を取っていたら、おそらく、伝統技術の衰退と蓄積した技術の海外流出というシナリオもあったのではないだろうか。汎用製品でなく、ガラパゴス製品に拘ったからこそ、アメリカ市場での差別化戦略が成功したように思う。
真似をしようとしても真似のできない技術と共存共栄
米国に工場を造っても重要な技術が日本に残っているからこそジャパン・ブランドとして世界市場で評価され、成功したのだと思う。真似をしようとしても真似のできない技術こそ日本の強みだと思う。簡単にコピーできる製品は、アジアに解放してアジアから輸入する方が賢いように思う。そして、こうした現象が現在、既に起こっているから円安に大きく振れても貿易輸出が増えないのではないだろうか。
貝印の本社がある岐阜県関市は、刃物づくりの街として有名で、今でも刃物づくりのノウハウを持った多くの地場企業が存在しており、貝印はそうした企業に自社製品の生産を担ってもらっているという。その関係は、下請企業という位置づけではなく、地域の伝統技術を守るグループ集団という感じをテレビを見ながら受けた。共存共栄だ。
(追記)
ネットで文化と文明の違いについて検索してみたら、面白い記述を見つけた。そして、ガラパゴス化が文化であり、コモディティ化が文明だと考えた。
👉文化と文明 ~『文化と文明という言葉があります。そして「企業文化」「組織文化」という言い方をしますが、「企業文明」「組織文明」という言い方はしません。この違いは何でしょうか?』
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