生き残る企業とその方策を探る!
〇ホンダ子会社の世界初「重レアアース0%」モーターを生んだ創造力~成功のポイントは二つある。一つ目は、11年に協業をスタートさせた磁石メーカー、大同特殊鋼の技術力だ。一般的な磁石メーカーとは異なり、「熱間加工法」というユニークな製造方法を得意とする。量産には向かないが、磁石の粒子が小さく耐熱性が高いという特徴にホンダが着目、タッグを組んだ。二つ目は、重希土類の含有率を「減らす」ではなくて「0%」に執着した開発姿勢だ。モーター回転子の「ローター」に組み込まれる磁石の配置を変えたり、ローターの形状を変えたりすることで、磁石の耐熱性を高めた。
〇タクシー、なぜ日本は自動ドア? きっかけは東京五輪~年商23億円の中小機械メーカーで、国内で約9割の市場シェアを現在まで握り続けているという。…「そもそも自動開閉ドアは規模がそれほど大きくないすきま市場。大手機械メーカーがあえて参入しても莫大な利益が出るわけではなかった」(東さん)。このため、初期段階から大きな市場シェアを握った同社は長年、大手の参入による競争にさらされることもなく、有利な立場を維持することができたとみられる。…現在、納入先の要望に応じて、バキューム式、手動式、電動式の3方式で対応している。…装置の取り付けやメンテナンスには手先の器用さが欠かせないうえ、各地域の車種や仕様に合わせた自動開閉ドアをわざわざ開発しなければいけない煩雑さもある。しかも海外の顧客サービスの感覚は、きめの細かい日本とはかなり異なるので「運転手がドアを開け閉めする方式は面倒でなじまない」と抵抗する声もあったらしい。こうした様々な要因が障害になり、米国のほか、英国やブラジルでも浸透せずに終わったという。…2020年の東京五輪に向けては、トヨタが17年秋にワゴン車の新型「ジャパンタクシー」(ドア開閉は電動スライド式)を発売。多くのタクシー会社が車両を切り替えつつある。
〇北海道の小さな書店が思いついた「3000人待ち」のサービスとは この「手間暇」を惜しまない~めんどうくさいから、手間暇がかかるから……と尻込みするばかりでは、会社の将来は開けていきません。むしろ、人がいやがるめんどうくさいところに積極的にお金を使ってみましょう。その思いきった戦略が活路を開く。こうした戦略はほかにもいろいろあるはずです。
〇“通信の巨人”ファーウェイ創業者が、衰退する日本のメーカーから学んだこと~任正非はまさに立志伝中の人物だが、その実像はほとんど知られていない。「肥えた豚は年の瀬に殺されやすい」という中国の格言を引き合いに出し、創業者であるにもかかわらずファーウェイの発行済株式の1%強しか保有していない。株式は非公開で上場益も手にしていない。「ビジネスの夢を叶えたいなら、社会との係わりを自制し、目立たないようにすることだ」と述べ、メディアの取材を全く受けない。
○ベーゼンドルファーのピアノは何が違うのか ヤマハ傘下の世界3大ピアノメーカーの今~ヤマハがベーゼンドルファーの技術面に一切口を出さなかったというのはとても新鮮な驚きだ。素人考えとしては、ヤマハの革新的な技術とベーゼンドルファーの伝統が合わさったときに生まれるすばらしいピアノに期待してしまうのだが、現実はまったくそうではなく、技術者同士の交流すらもないという。「彼らは1828年の創業以来積み重ねてきた伝統や技術を頑なに守り続けています。暖かな音色や弦楽器との融和性など、ヤマハのピアノとはまったく違う音楽の場で活躍できるピアノを目指しています。それが彼らの持つ価値であり、彼ら自身もそれをさらに磨いていこうと願っています。そこにヤマハの意向を入れるつもりはまったくありません」伊藤執行役員のこの言葉が心に残る。どうやら伝統を尊重するという意思こそが双方共通の考え方だったようだ。
○鉄工所から月面へ!「利益」を追いかけるのではなく、「人の成長」を追いかける理由~鉄工所なのに、「量産ものはやらない」「ルーティン作業はやらない」「職人はつくらない」!なのに、ここ10年、売上、社員数、取引社数、すべて右肩上がり。そんな会社をご存じだろうか?その名は、「HILLTOP株式会社」。京都府宇治市に本社がある。
〇マックが「最悪から最高」に変身した理由 ~私のゼミでは、マクドナルドの業績が弱い回復傾向にあった16年11月、ゼミ生20名で手分けをして、マクドナルドを利用する人946名にアンケート調査を行いました。内容は、ファストフードレストランを選ぶ際の主要因である、食の安全、味、値段に見合う価値、接客、待ち時間、清潔さ、居心地のよさの7項目について評価するものです。…その結果、いずれの指標ともずば抜けて高い数値を示したのが「食の安全」と「清潔さ」でした。マクドナルドの顧客は、この2つの要素に高い関心があり、かつ不満を持っているということです。また、来店頻度の高い顧客(週2回以上)は、「接客」に不満を持っていることもわかりました。
〇セブンが勝てない「最強コンビニ」の秘密 乳牛も野菜もおにぎりも全部が自前~北海道に限ると異なる風景が見えてくる。セブン1000店、ローソン655店、ファミマ236店に対し、セイコーマートは1101店。ここではセブンを上回り、堂々の第1位だ。…店内に足を踏み入れると、まず店内調理品を展開する「ホットシェフ」コーナーが目に入る。セイコーマートの多くの店舗では、併設の厨房でカツ丼や豚丼、カツカレー、クロワッサン、おにぎりなどを調理し、できたてを販売している。米は厨房で炊き、クロワッサンも厨房のオーブンで焼いているという。これほどの規模で店内調理を行うコンビニチェーンは、ほかにはないだろう。
〇京都の老舗和菓子屋を救った若女将の超才覚 創業200年の伝統を現代へ通用するワザに~「借金返済のため、自分に何かできることはないか?」。そう考えた由依子さんが着目したのは新規顧客の開拓だった。…由依子さんの誠意が伝わり、「懐中おしるこ」をベースに新商品として試しに作ってもらうことに。するともともと1シーズン200個だった「懐中おしるこ」に対し、新商品の売り上げは同2万5000個にも達した。なんと125倍である。…他にも次々とヒット商品を連発し、業績が大幅に回復。今から1年半前には店舗を全面改装するまでになった。
〇地方路線バス、驚異の精密運行 秒単位のデータ収集、アンケート調査…3年で事業再建~イーグルバスは、関係各所と交渉してバス停を「峠口」から「病院前」に移動した。その結果、乗客の利便性が増し、さらに乗客を呼び込むことに成功したのである…より大胆な改革として、航空業界で使われるハブ&スポークという方法を採用した。町の真ん中に中継所(ハブ)となるバス停留所を設置することにしたのである。…こうした取り組みによって、イーグルバスは利用者を25%も増やすことができた。事業を再建する際、コスト削減だけでは限界があり、顧客を増やす努力が不可欠だ。
〇勃興する「地方の虎」縮小市場に即断即決の多角化で挑む~人口減、少子高齢化などで地方経済の衰退が急速に進んでいる。公共工事削減や企業が進める工場の海外移転なども、地方を基盤とする企業の衰退を後押ししているように思える。だが、そうした状況下でも、急成長を遂げている地方企業がある。人呼んで「地方の虎」。